つくる、たべる、すごす、家族の文化誌「ONION」
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中川正子 / 写真・文「手は、知っている」

見る、聞く、嗅ぐ、味わう、そして、触る。産み落とされ、まだ目が見えなかったころの小さなわたしたちは、「見る」以外のやり方で、この世界の成り立ちをひとつずつ、知っていったのだろう。ひとびとの声で鼓膜をふるわせ、母の肌に鼻を押しつけ、においを吸い込み、母乳やミルクを舌に乗せ、そして、なにもかも、触って。手は、知っている。視界が広がりあざやかな色彩を手にしたその後も、手の記憶は、続く。父がはりきって買ってきてくれた錫のコップはひんやりと冷たく、遠い国の温度。耳たぶと白玉粉の、それぞれのやわらかさ。ゆで卵をむいたとき、手のひらに残った硬い殻のかけら。きゅうりの外側のぶつぶつを、爪でそっと削り取った時のこと。炊きたてのごはんで母と一緒ににぎったおにぎりが熱くて、大丈夫、と冷やしてくれたボールに張られた氷水。手は、覚えている。目で見た以上の何かを、ときおり、おどろくほど強く、覚えている。

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※中川正子 / 写真・文「手は、知っている」は、
「ONION Paper」 issue01(創刊号)にて掲載しています。
「ONION Paper」はタブロイド誌です。


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